『母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』 信田さよ子 著


この本は、タイトルや内容から、かなりの話題となりましたね。


女性は、母になると全て「母性」に目覚め、無償の気持ちで子どもを愛するという考えは、人間生来の自然なものではなくて、現代の社会・経済の要請による人工的なものである、という考え方が基本となっています。


その土台のうえで、母の自己中心的な娘への圧力が、娘に与える強いストレスを、様々な事例を紹介しながら、つまびらかにしていきます。


「あなたのためを思って言っている・やっている」という、一見、自己犠牲的発言の裏にある、自尊心を娘で満たそうとする欲求を、きびしーく、糾弾しています。

普通の母親のつもりもワタシも、耳が痛い。


ここで描かれるのは、「殺人少年」(ドロシー・ルイス著)にあるような、明確な児童虐待ではなく、「虐待」という区分にはあてはまらない、「普通の母子関係」。

逆に、「あのお母さんは熱心」「一生懸命子どもの世話をしている」という母であったりします。


外からは決してうかがい知れない、家の中・家族関係の暗黙のルールが、娘を摂食障害にしたり、リストカットに走らせたりする。

母は、自分に原因があることに無自覚である。

被害者である娘でさえも、往々にして無自覚であり、「母を愛せない、許せない自分が悪いのだ」と罪悪感を持つ。

母に対する「怒り」の感情を持つ、「怒りの感情を持つことは正しいんだ」と気付くことが、回復の第一歩だと書いています。


「墓守娘への処方箋」の他、「母への処方箋」「父(夫)への処方箋」も紹介。

夫は、「妻のあの言い方がきついから、娘は怒るんだよね」など、評論家的になっていて、自分が当事者であるという自覚がない。

娘は、母を突き放す・母と距離をとることから生まれる罪悪感を、「必要経費」ととらえて、それと付き合っていこう・・・、など、実践的で、思わず納得する内容満載。

多数の実践と、著者が持つ、ゆらぎのない理論があるためか、説得力がありおもしろいです。家族関係に悩む人、娘との付き合い方に悩む人には、超お勧め。

 

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