『それでも吐き続けた私』 冨田香里 著


中学生の頃から、「過食嘔吐」という摂食障害と10年以上付き合った著者が、生まれ育った家庭・自らの恋愛や結婚や別れ・仕事のことなど、これまでの生活上のエピソードを振り返りながら、摂食障害からの回復の道を綴っています。

父母の不和による家庭生活の不安定さ。

母親からの「えらくなってパパや向こうのおばあちゃんを見返すのよ」という言葉に典型される、「よい子」を望む圧力。

冨田さんは、その期待に応え、私立中学に合格し、その後も、エスカレーター式に大学に入り、一流会社に就職します。

華々しく活躍するキャリアウーマンとしての表の顔。

その裏で、大量の飲食とトイレでの嘔吐を繰り返す日々が続きます。

過食嘔吐のセルフヘルプグループで、斎藤学医師と出会い、そこをステップにして、冨田さんなりの様々な治療法を試み、父や母との関係の再構築をし、生き方を見直していって、やがて、摂食障害からの回復を果たしてゆきます。

最終的に、回復の大きな要因となった治療法は、エクスプレッシブ・アーツ・セラピーと言われるもので、かのカール・ロジャース(来談者中心療法という、心理学では超有名なカウンセリング技法を確立した人)の娘さんが中心になって行っているワークショップ。

幼稚園的な自己表現、内面の表出、サイコドラマ、等々がその内容で、参加している間にも、「ここでいいのか?」という不安や、いらだちを感じつつ、様々な気づき体験をして、自分が持っていた固さやゆがみに気付いていく、という過程が、丁寧に描かれています。

その他の療法も、初めて知るものばかりで、興味深い。それぞれ、合う人と合わない人がいるかとは思うけれど、摂食障害に悩む人は一読してみると良いと思います。


摂食障害のことや、自らの人生を語るその内容が、理知的で、でも、分かりやすくて赤裸々で、読み応えがありました。

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